シェールガス革命で世界は激変する [D2.日本史・世界史・近未来]
「エネルギー」ってのは、産業の根幹をなすもので、この資源獲得のために今まで戦争が起こっていたと言っても過言ではないでしょう。エネルギーの主役が石炭から石油へ移行し、中東諸国は莫大な富を得ています。しかし、この資源もいずれは枯渇し、主役は石油から原子力そして、太陽光に移行すると言われています。
そんな中、突然、降って湧いたように「シェールガス」なるものが、石油の次のエネルギーとして現れました。しかも、この化石燃料は、後何百年分もあるそうです。この存在は、昔からわかっていたそうですが、これを効率的に抽出する方法が確立されていなかったのが技術革新により確立されたのと、原油価格の高騰によりハードルが下がった事によります。
石油や天然ガスは、中東、アフリカ、ロシアなど、どちらかというと発展途上国で主に産出され、ある意味、「富の分配」的な感じがしていて、公平感はありましたが、シェールガスは、世界各地に分散しているとはいえ、今のところアメリカでのシエールガスが先行しており、2020年に、アメリカは、ガス輸出国に転じるという超ラッキーな立場になりました。これは、現在、既に超大国のアメリカに、更に自然の恵みが与えられるのは、少々、不公平だと感じるのは私だけでしょうか。
しかし、この本によると、このシェールガスを抽出するのは、日本の技術なくしては、実現せず、日本企業も相当の恩恵を受けるそうですが(まあ、これは努力に対する当然の対価ではありますが)。コマツやブリジストンなどの大型トラックの需要は上昇。
とにかく、このシェールガスにより、21世紀もアメリカの超大国の地位は揺らがないと本書は言い切っています。
シェールガス革命は、エネルギーコストの引き下げ、「デフレ」経済を誘発する。このデフレが中国経済を直撃する。そして失業者の増加が、政治不安を起こす。また、中東の産油国の重要度が下がり、欧米のこれらの国への介入もなくなり、「平和」が訪れる。しかし、中東のオイルマネーを一手に集めてきた英国のシティは苦境に陥り、欧州の中心は英国からドイツへ移る。ユーロを握ったドイツは、ユーロ安で輸出は絶好調。日本の技術が欧州に参入できないのは、ドイツがユーロを握っているから。電気自動車(EV)の普及速度は遅れる。そうするとリチウムイオン電池の需要も下がる。シェールガスで走る車は燃費が悪い車でもOKかもしれない(シェール6円、石油10円)、そうすると日本は困る。米国で製造業が復活するかもしれない。航空路線が増え、鉄道ともっと競合するようになる。
メタンハイドレートの実用化が見えれば、日本近海に眠る100年分のこのエネルギーが日本の神風になる。