SSブログ

逝きし世の面影 (ゆきしよのおもかげ) [D2.日本史・世界史・近未来]

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: 渡辺 京二
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

  •  
  •  .
  • .
  • フィリピンに行くと何時も思うのが、「この国は、相変わらず貧しいけど、何で皆、何時も笑っていて幸せそうにしているんだろう」と言うことです。
  • .
同じように、この本は、江戸末期、明治初期の1860年頃、今から150年前の日本を外国人の眼からみた探訪記より記述したものです。


非常に日本に好意的な文章が並び、(たとえば、「妖精の棲む小さくてかわいらしい不思議の国」)、ちょっと嬉しいと共に、そんなに良かった日本は何処に行ったのかなとも思います。


明治維新の時は、「封建主義」からの脱却という名目で維新が行われ、それ以前の体制を否定しました。外国人も専制君主制で庶民は困窮しているのだろうと来日したら、日本の庶民は幸せを謳歌していることを発見し、大いに戸惑ったそうです。例えば、こういう外国人の記述があります。「日本の幕府は専横的封建主義の最たるものと呼ぶ事ができる。しかし同時に、かつて他のどんな国民も日本人ほど、封建的専横的な政府の下で幸福に生活し繁栄したところはないだろう。」


彼らはよく肥え、身なりもよく、幸福そうである。一見したところ、富者も貧者もない。これが恐らく人民の本当の幸福の姿というものであろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの他の国におけるよりも多く日本において見出す。生命と財産の安全、全般の人々の質素と満足とは、現在の日本の顕著な姿であるように思われる。(1857年 安政4年)ー家具などは殆どなかったそうです。

これは、欧州でも工業化到来前にはあった現象で、初期工業化による都市のスラム化やそこでの悲惨な貧困と道徳的崩壊は当時の日本にはなかった訳です。

誰の顔にも陽気な性格の特徴である幸福感、満足感、そして機嫌のよさがありありと現れていて、その場所の雰囲気にぴったりと融けあう。彼らは何か目新しく素敵な眺めに出会うか、森や野原で物珍しいものを見つけてじっと感心して眺めている時以外は、絶えずしゅべり続け、笑いこけている。(1886年 明治19年)

職人技術が高い、建築は質素だが、部分部分に芸術的な細工がほどこされている。世襲である。また人力車夫などの肉体労働者の肉体は、古代ギリシャの彫刻のようである。よって、下層階級のほうが上流階級より見栄えがいい。

日本の下層階級は、私の看るところをもってすれば、むしろ世界の何れの国のものよりも大きな個人的自由を享有している。そうして彼らの権利は驚くばかり尊重せられていると思う。そして、民衆が自由なのは、日本では下層民が「全然上層民と関係がないから」である。村や町の共同体の一員であることによって、あるいは身分ないし職業による社会的共同体に所属することよって得られる自由である。

家庭内のあらゆる使用人は、自分の眼に正しいと映ることを、自分が最善と思うやりかたで行う。命令にたんに盲従するのは、日本の召使にとって美徳とはみなされない。これは、封建下の家臣から由来したものかもしれない。

幕末来日した西洋人を仰天させ、ひいては日本人の道徳的資質さえ疑わせるにいたった習俗に、公然たる裸体と混浴の習慣があった。


平常の時は日本人の宗教的熱意は低調で、寺院は殆ど見捨てられている。


どうでしょうか。

幕末の日本は、マズローのいうところの第一(生理的)の欲求、第二(安全)の欲求、第三(帰属)の欲求までを下層階級まで甘受していた訳です。徳川三百年の太平の世のなせる業だったのでしょう。その後、資本主義が導入されていき、国力は増したかもしれませんが、庶民の幸せは、増大したかというと、疑問ですね。

内容(「BOOK」データベースより)

「私にとって重要なのは在りし日のこの国の文明が、人間の生存をできうる限り気持のよいものにしようとする合意とそれにもとづく工夫によって成り立っていたという事実だ」近代に物された、異邦人によるあまたの文献を渉猟し、それからの日本が失ってきたものの意味を根底から問うた大冊。1999年度和辻哲郎文化賞受賞。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

渡辺/京二
1930年、京都市生まれ。日本近代史家。書評紙編集者などを経て、河合塾福岡校講師。



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

書籍市場 [C1.読書 (読み)]

   今日の日経新聞によると、2014年の書籍市場は、1兆6000億円で、1996年から1兆円も下がったそうです。
   まあ、これはネットの影響が大ですね。知識を得るための読書だと、ネット検索の方が効率が良い訳です。
   しかし、読書は、深い知識や考える力が醸成されると思います。部下には、週一冊の読書を目標にするように言っています。
   まあ、現実は、それほど時間が取れないというのがネックになっているようですね。
   
   電子書籍の市場は、たった1400億円だそうです。電子書籍は読みたいと思った時にすぐダウンロードでき、スマホでも読めるし、価格も本より安いのでもっと普及してもいいと思います。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。