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とてつもない日本 [D1.政治・経済・社会]

とてつもない日本 (新潮新書)

とてつもない日本 (新潮新書)

  • 作者: 麻生 太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/06/06
  • メディア: 新書

●ソートリーダーシップ(Thought Leadership)とは、特定のセグメントや分野において将来を先取りしたテーマやソリューションを示し、人々の議論や思想形成を引き起こすことにより、そのテーマやソリューションについて改めてより深く考えるようにする活動を指す。

外務省 ODAホームページ 日本の国際援助は半端ではない。

●2003年8月 TIME 「アメリカ人は日本がハードの国だと思っているけど、その考え方は捨てなくてはならない。日本の最大のパワーはソフトだ。」

i01_151.jpg椎名林檎

 アジアの街でミッキーマウスやドナルドダックは見かけないが、ポケモンやドラえもんは溢れている。TIMEによると「日本のサブカルチャーの持っている力を、日本人は全く理解してない。」

●今、70歳代を「老人」と呼ぶだろうが、ビートルズのメンバーのこの年代である。ということは、この世代は既にロックンロール世代ということで、それ以前の世代の老人とはかなり違うであろう。このパワーは半端ではないだろう。

内容(「BOOK」データベースより)

格差社会、少子化、教育崩壊…。メディアでは暗い話ばかりが喧伝されるが、日本は本当にそんなに「駄目な国」なのだろうか。戦後、一度も戦争をせず、努力の末、経済的繁栄を実現した。トヨタ、ソニー、カラオケ、マンガは言うまでもないが、日本人が考えている以上に日本は評価され、期待もされている。悲観していても何も始まらない。「日本の底力」をもう一度見つめ直し、未来を考えるための一冊。
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81 books in 2014
はじめに

 平成十七(二〇〇五)年の暮れ、外務大臣としてインドを訪問する機会があっ
た。首都ニューデリーに滞在中、できたばかりの地下鉄を視察したのだが、この
時インドの方々からうかがった話が今でも忘れられない。
 この地下鉄視察が日程に組み込まれたのは、日本の政府開発援助(ODA)を
使って建設されたものだからであった。私たちが訪ねた駅には日本とインドの
大きな国旗が掲げられており、日本の援助で作られたということが大きな字で書
いてあった。改札口にも大きな円グラフが表示され、「建設費の約七十パーセン
トが日本の援助である」と分かるように、青で色分けしてあった。その配慮に感
激し、私は地下鉄公団の総裁に御礼の言葉を述べた。
 すると、逆にこんなふうな話をしながら、改めて感謝されたのである。

 ----自分は技術屋のトップだが、最初の現場説明の際、集合時間の八時少し前
に行ったところ、日本から派遣された技術者はすでに全員作業服を着て並んでい
た。我々インドの技術者は全員揃うのにそれから十分以上かかった。日本の
技術者は誰一人文句も言わず、きちんと立っていた。自分が全員揃ったと報告す
ると、「八時集合ということは八時から作業ができるようにするのが当たり前
だ」といわれた。
 悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後
このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言
葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底
的に説明された。
 いつのまにか我々も「ノーキ」という言葉を使うようになった。これだけ大き
なプロジェクトが予定より二か月半も早く完成した。もちろん、そんなことはイ
ンドで初めてのことだ。翌日からは、今度は運行担当の人がやってきた。彼らが
手にしていたのはストップウォッチ。これで地下鉄を時間通りに運行するよう言
われた。秒単位まで意識して運行するために、徹底して毎日訓練を受けた。その
結果、現在インドの公共交通機関の中で、地下鉄だけが数分の誤差で運行されて
いる。インドでは数時間遅れも日常茶飯事であり、数分の誤差で正確に動いてい
るのは唯一この地下鉄だけである。これは凄いことだ。
 我々がこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、資金援助や技術援助だ
けではない。むしろ最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の
美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのも
のが最大のプレゼントだった。今インドではこの地下鉄を「ベスト・アンバサ
ダー(最高の大使)」と呼んでいる----。

 私はこの話にいたく感銘を受けた。
 地下鉄建設に携わった日本人技術者たちの仕事ぶりそのものが、優れた外交官
の役割を果たしたのである。彼らはなにも、よそ行きのやり方をやって見せたわ
けではない。いつものように、日本で普通に行なっているスタイルで仕事をした
に過ぎない。しかしそれが、インドの人々には「価値観が覆るほどの衝撃」だっ
たのだ。
 日本ではよく「カローシ(過労死)」を例に挙げて、日本人は働き過ぎ
だ、日本人の働き方は間違っているという人がいる。だがそれはあまりに自虐的
で、自らを卑下し過ぎてはいないだろうか。「ノーキ」を守る勤勉さは、私たち
が思っている以上に、素晴らしい美徳なのである。
 第三次小泉改造内閣、安倍内閣と続けて外務大臣を拝命し、一年半が過ぎた。
この間、二十三か国を訪問し、国際会議や国内での会談を含めれば、のべ百か
国以上の首脳とお目にかかったことになる。
 私は外務大臣をやらせていただいていることに心から感謝している。なぜな
ら、外務大臣として様々な国を訪ね、各国要人と話したことで、世界におけ
る日本の位置づけを改めて確認することができるからだ。どの国の人からも日本
に対する期待がヒシヒシと伝わってくる。外相就任は、日本の実力を冷静な視点
で再確認できたという意味で、貴重な経験になっているように思う。

 日本はまことに不思議な国である。
 敗戦後は一度も戦争をすることなく平和と安定を維持し、数十年に及ぶ努力の
結果、世界史上でも希に見る経済的繁栄を実現した。
 にもかかわらず、新聞を開けば、やれ格差社会だ、少子化だ、教育崩
壊だ......と大騒ぎ。テレビをつければ凄惨な殺人事件ばかりが報じられ、
識者と称する人たちが「日本はなぜこんなにおかしくなったのか」などと語って
いる。新聞やテレビを見ていると、まるで明日にでも日本が滅びそうな気がして
くる。
 でも、ちょっと待っていただきたい。日本は本当にそんなに「駄目な国」なの
だろうか。そんなにお先真っ暗なのだろうか。
 私は決してそうは思わない。むしろ、日本は諸外国と比べても経済的な水準は
相当に高いし、国際的なプレゼンスも極めて大きい。日本人が考えている以上
に、日本という国は諸外国から期待され評価されているし、実際に大きな底力を
持っているのである。
 バブル崩壊以降、日本はもっとグローバル・スタンダードを導入すべし、など
という議論が幅をきかせたけれども、私に言わせれば、むしろ「日本流」がグ
ローバル・スタンダードになっている現実もあるのだ。トヨタ、ソニー、カラオ
ケ、マンガ、ニンテンドー、Jポップ......。「ノーキ」や「カイゼン」が、世
界の経済にどれだけ貢献しているか。インスタント・ラーメンやカップ麺が、ど
れだけの人を救ったか。
 日本は、マスコミが言うほどには、決して悪くない。いや、それどころか、ま
だまだ大いなる潜在力を秘めているのである。
 もちろん、目の前に課題がないわけではない。少子高齢化に伴い、人口構成が
変わってゆくのは間違いないし、それに応じて政策を変えていかなければならな
いだろう。社会の活力を維持しながら、セーフティネットを構築することも不可
欠だ。しかし、そもそも社会というのは常に変化するものなのであり、それに合
わせて臨機応変に対策を講じていけばよいのである。目の前の変化に怯えて、い
たずらに悲観ばかりしているのは、かえって国の舵取りを危うくさせるのではな
いだろうか。
 本書は、そんな思いから、私なりに「日本の底力」をもう一度、見つめ直して
みようとしたものだ。ときには話が脇道にそれてしまったり、かなり乱暴な物言
いになってしまったりしたところもある。しかし、これは「失言」や「放言」の
たぐいではない。発想の転換のために、あるいは考えるヒントとして、あえ
て暴論、異論めいたことも述べさせていただいた。あまり眉間に皺を寄せずに、
柔らかい頭で読んでいただけると有り難い。これからの日本を考える上で、本書
が議論のきっかけになれば本望である。
 祖父・吉田茂は、私が幼い頃、よくこんなふうに語っていた。
「日本人のエネルギーはとてつもないものだ。日本はこれから必ずよくな
る。日本はとてつもない国なのだ」----。
 私はいま、その言葉を思い出している。


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