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なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理 [人事1 組織改革]

なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理

  • 作者: 菊澤研宗
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/03/18
  • メディア: 単行本
 ●取引コスト;会計上に表れる物理的なコストではない。つまり、五感で感じられるコストではない。それは、主に人間関係が生み出すコストである。それゆえ、「人間関係が深い人」のほうが、取引コストの罠に落ちやすい。
 ●羽田ハブ化の問題;ハブ化を無理に進めようとすれば、千葉県の利益に関係する多くの利害関係者たちは、自分たちの利害や、成田空港をめぐる闘争にかかわってきた人々のことも考えて、様々な抵抗運動を起こすだろう。そのような多様な利害関係者と交渉し、説得し、取引するには膨大な手間隙(取引コスト)が発生するのは、誰の目にも明らかである。一方で、羽田空港ハブ化から得られる長期的な利益は、誰の目にも明らかになるほどにまではなってない。だから、「たとえ現状が非効率だと感じられてもなお、現状を維持したほうが(限定的に)合理的だ」という不条理に陥ってしまうのである。こうして、改革の対象であるべき「非効率」は改革されることなく、放置され続ける。
 ●もし、上司が理解のない人や部下から嫌われているなら、重要な現場の情報は上がってこないだろう。このような組織では、部下たちは不条理に行動するからである。つまり、たとえ重要な情報を得ていたとしても。それを上司に報告したり、上司に説明したりするコスト(取引コスト)が非常に高いので、報告しないことが合理的になってしまう。このような人間関係からなる組織は、時間とともに問題を大きくし、最終的には大改革に迫られることになる。このような人間関係上の取引コストを普段から節約しておくためには、飲み会や社内旅行などもが必要であり、上司関係や同僚間の取引コストが節約される可能性が高い。
 ●

プリンシパル=エージェント関係(-かんけい、principal-agent relationship)とは、行為主体Aが、自らの利益のための労務の実施を、他の行為主体Bに委任すること。このとき、行為主体Aをプリンシパル(principal、依頼人、本人)、行為主体Bをエージェント(agent、代理人)と呼ぶ。エージェンシー・スラック(agency slack)とは、エージェントが、プリンシパルの利益のために委任されているにもかかわらず、プリンシパルの利益に反してエージェント自身の利益を優先した行動をとってしまうこと。エージェンシー問題(-もんだい、agency problem)とは、プリンシパル=エージェント関係においてエージェンシー・スラックが生じてしまう問題のこと。

  ●プロスペクト理論;プロスペクト理論は、非合理的な人間心理に注目し、損失回避性感応度逓減性の2つをわかりやすく説明しています。損失回避性
プロスペクト理論たとえば、X社の株を買ったとします。X社の株は、小幅ながら上昇しはじめています。待てば利得を大きくできる半面、損失の可能性も大きくなります。
こうした場合、待つことができずに株を手放し、わずかな金額でも利得を確定させてしまうことがあります。一方、高値で買ったY社の株価はこのところ下がる一方です。しかしいま売りに出すと損失が出るため、売るに売れずに泥沼にはまることがあります。 両者に共通しているのは、人は利得以上に損失を嫌う傾向があるということです。下の図をみると、利得よりも損失のカーブの満足度(効用)が急激にマイナスになっていることがわかります。Aさんが加算される200万円よりも、減額される200万円のほうが大きな金額に見えた背景には、損失回避性と呼ばれる人間心理があったのです。

内容紹介

「空気」に流されたり、「非効率」が放置されたり……。当事者は合理的に考え「改革」を推進していても、結果的に行き詰ってしまうことは多い。そんな「改革の不条理」を行動経済学などの理論(「取引コスト理論」「エージェンシー理論」「所有権理論」「プロスペクト理論」)を用いて分析。企業の組織変革から社会問題まで、多様な事例をもとに改革が“合理的に失敗する”プロセスを明らかにし、「改革」を遂行するための条件を提示する。
6 books in 2012

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