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これから「正義」の話をしよう [D3.心理学・哲学]

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

  • 作者: マイケル・サンデル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 単行本

 Book Rankingで1位になった本なので、ちょっと読んでみましたが、流石に人気授業ですね。内容が濃く非常に面白かったです。

 アリストテレスがいうには、道徳的生活が目指すものは、幸福です。「幸福」という言葉を功利主義的な意味‐快楽を最大に、苦痛を最小にすること‐で使ってはいけない。徳のある人とは、快楽と苦痛を、それぞれ適正なものについて感じる人のことだ。道徳的にすぐれている人は、快楽と苦痛を集計するのではなく、それらを一つの線上に並べ、崇高なものを喜び、卑劣なものに苦痛を感じるものなのだ。幸福とは心の状態ではなく人間のあり方であり、「美徳に一致する魂の活動」なのだそうです。

 また、美徳を身につけるのは笛の吹き方を習得するのと似ている。本を読んだり講義を聴いたりして楽器の演奏を覚える人はいない。練習しなくてはいけない。熟練した音楽家の演奏を聴き、耳から演奏法を学ぶのも有効だ。ヴァイオリンを奏でずにヴァイオリニストにはなれない。美徳も同じだ。「我々は正しい行動をすることで正しくなり、節度ある行動をすることで節度を身につけ、勇敢な行動をすることで勇敢になる」と説いています。

 カントの考え方のなかでも、特に理解しがたいのは他者を助ける義務に関するものだ。世の中には利他的な人間がいる。彼らは思いやり豊かで、喜んで他者を助ける。しかし、カントに言わせれば、思いやりからなされた善行は「どんなに正しく、どんなに感じがよかろうと」道徳的な価値に欠ける。これは直観に反していると思うかもしれない。他者を助けるのに喜びを感じるのはいいことではないのか。カントはイエスと言うだろう。もちろん彼も、思いやりを持って行動することが悪いと考えているわけではない。しかし、カントは、他者を助けるという行為の動機(善行をなすことで喜びを感じること)と、義務の動機を区別している。そして義務の動機だけが、行動に道徳的な価値を与えると述べている。利他的な人間の思いやりは「称賛と奨励に値するが、尊敬には値しない」。それでは善行に道徳的な価値があるのは、どのような場合か。カントは具体例を挙げる。利他的な人間が人間性への愛を打ち砕かれるような不運に遭遇したとする。彼は人間嫌いになり、同情や思いやりもなくす。ところが、この冷血漢が普段の無関心さを脇に置いて、他の人間を助けに向かう。助けたいという思いはまったくないが、「ひとえに義務のため」だ。この時初めて、彼の行動は道徳的な価値を持つ。これは少々おかしな判断のように思われる。カントは人間嫌いを道徳的な行動の手本だというのか。いや、正確には違う。正しいことをして喜びを得ても、その行動の道徳的な価値が損なわれるわけではない。カントが重要だと言っているのは、善行が喜びをもたらすかどうかではなく、そうするのが正しいからという動機で善行をなすことだ。

内容紹介

『ハーバード白熱教室』NHK教育テレビにて放送中(2010年4月4日~6月20日、毎週日曜18:00~19:00、全12回)! ハーバード大学史上最多の履修生数をほこる超人気哲学講義、待望の書籍化! 推薦:宮台真司氏

1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 金持ちに高い税金を課し、貧しい人びとに再分配するのは公正なことだろうか? 前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか――。つまるところこれらは、「正義」をめぐる哲学の問題なのだ。社会に生きるうえで私たちが直面する、正解のない、にもかかわらず決断をせまられる問題である。哲学は、机上の空論では断じてない。金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった、現代世界を覆う無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。この問題に向き合うことなしには、よい社会をつくり、そこで生きることはできない。アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、そしてノージックといった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。
ハーバード大学史上空前の履修者数を記録しつづける、超人気講義「Justice(正義)」をもとにした全米ベストセラー"Justice: What's the Right Thing to Do?"、待望の邦訳。

 これは、You Tubeでも流していますので、是非見てください。最近は便利になって、日本語のサブタイトルも表示させることができます。

日本語放送は

 

[高画質で再生]

ハーバード大学 白熱教室 第1回part1 Michael Sandel  [ライブチャット]

今年39冊目

 

 


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コメント 1

マイク島田

http://itunes.harvard.edu/
i-Tunes University (Harvard University)にもコンテンツがあります。当然、英語のみになります。
by マイク島田 (2010-07-20 06:45) 

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