定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 (中公新書)



  • 作者: 楠木 新

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社

  • 発売日: 2017/04/19

  • メディア: 新書




●PPK(ピンピンコロリ)

●大学の聴講生は安価で授業を受けれる

●60-74歳の15年間が人生の黄金期



メディア掲載レビューほか


 


「定年後」に何を失うのか、どう生きるべきかを描いて14万部


会社員ならいつかは経験する定年。その先にある、長い「定年後」の人生をどう生きるか。還暦を迎えた自身の経験談も含む当事者への豊富なリサーチや、統計に基づく分析、はたまた映画や小説に描かれた「定年後」の紹介といった、さまざまな視点で切り込んだ新書の売れ行きが好調だ。


 


「重松清さんの『定年ゴジラ』を始め、定年後の生活を描いた小説のヒット作は多いですし、具体的にお金や健康の不安をテーマにした実用書も数多いです。そうした中で、両者の中間にあるような、読み物としてのおもしろさと役立つ知恵が合わさった本はなかなかなく、そこに企画の可能性を感じました」(担当編集者の並木光晴さん)


 


定年退職で何が失われるのか。収入は当然として、たとえば、所属の書かれた名刺が持てなくなる。そのことが心に空ける穴の意外な大きさ。仕事と一緒に家庭での居場所もなくなり、趣味を急に持つのも難しい。細やかなディテールで綴られるビジョンが、いつか来るときに向けて心をそっと後押しする。


 


「当事者の方が参考にされるのはもちろん、これからご家族が定年退職される立場にある方が読んでも参考になる本になったと思っています。家でゴロゴロするだけになった配偶者の方に嫌気が差す前に、この本の事例を参考にして、一緒に上手い対処法を探っていただけるといいんじゃないでしょうか」(並木さん)


評者:前田 久


(週刊文春 2017.07.13号 掲載)


「主体性」の復活


周知のとおり日本の平均寿命は延びつづけ、定年後の期間もまた長くなっている。そして、いざ定年を迎えて困惑してしまう人々(ほとんど男性)も増えているようだ。


楠木新の『定年後』がよく読まれている背景にも、そんな現状が透けて見える。自分は定年後の人生を豊かに過ごせるのか、多くの男性会社員たちが不安を抱いているのだろう。


楠木自身、大手生命保険会社に勤務しているときから定年後についていろいろ学び、準備を実践してきた。しかも、50歳からは「会社員から転身した人たち」を取材するフリーランスの仕事を兼ねるようになり、定年後も「働く意味」をテーマに取材や執筆をつづけている。この本の魅力は、このような楠木の試行錯誤と体験を根底に書かれている点にある。


60歳から74歳までの、楠木が「黄金の15年」と呼ぶ時間を充実したものにするためには、50代からの助走が必要となるらしい。究極的には、自分の「死」を意識して逆算で考え、子どもの頃にやりたかったことや会社員時代に培った能力を活かすよう設計してみることが肝要と楠木は説く。


これを別の視点でまとめれば、「主体性」の復活になるだろう。長く組織で働く間に身についてしまった「お任せする」姿勢や、「空気を読む」習慣を払拭し、自分が主役となって生きるためにどうすればいいか、考えてみる。そう遠くない先に死がひかえているのだから、自分に正直に検討し、実践してみればいい。


中年の男性会社員よ、「いい顔」で死ぬためにも、定年後ぐらいは主体的に生きましょう。


評者:長薗安浩


(週刊朝日 掲載)

メディア掲載レビューほか


 


「定年後」に何を失うのか、どう生きるべきかを描いて14万部


会社員ならいつかは経験する定年。その先にある、長い「定年後」の人生をどう生きるか。還暦を迎えた自身の経験談も含む当事者への豊富なリサーチや、統計に基づく分析、はたまた映画や小説に描かれた「定年後」の紹介といった、さまざまな視点で切り込んだ新書の売れ行きが好調だ。


 


「重松清さんの『定年ゴジラ』を始め、定年後の生活を描いた小説のヒット作は多いですし、具体的にお金や健康の不安をテーマにした実用書も数多いです。そうした中で、両者の中間にあるような、読み物としてのおもしろさと役立つ知恵が合わさった本はなかなかなく、そこに企画の可能性を感じました」(担当編集者の並木光晴さん)


 


定年退職で何が失われるのか。収入は当然として、たとえば、所属の書かれた名刺が持てなくなる。そのことが心に空ける穴の意外な大きさ。仕事と一緒に家庭での居場所もなくなり、趣味を急に持つのも難しい。細やかなディテールで綴られるビジョンが、いつか来るときに向けて心をそっと後押しする。


 


「当事者の方が参考にされるのはもちろん、これからご家族が定年退職される立場にある方が読んでも参考になる本になったと思っています。家でゴロゴロするだけになった配偶者の方に嫌気が差す前に、この本の事例を参考にして、一緒に上手い対処法を探っていただけるといいんじゃないでしょうか」(並木さん)


評者:前田 久


(週刊文春 2017.07.13号 掲載)


「主体性」の復活


周知のとおり日本の平均寿命は延びつづけ、定年後の期間もまた長くなっている。そして、いざ定年を迎えて困惑してしまう人々(ほとんど男性)も増えているようだ。


楠木新の『定年後』がよく読まれている背景にも、そんな現状が透けて見える。自分は定年後の人生を豊かに過ごせるのか、多くの男性会社員たちが不安を抱いているのだろう。


楠木自身、大手生命保険会社に勤務しているときから定年後についていろいろ学び、準備を実践してきた。しかも、50歳からは「会社員から転身した人たち」を取材するフリーランスの仕事を兼ねるようになり、定年後も「働く意味」をテーマに取材や執筆をつづけている。この本の魅力は、このような楠木の試行錯誤と体験を根底に書かれている点にある。


60歳から74歳までの、楠木が「黄金の15年」と呼ぶ時間を充実したものにするためには、50代からの助走が必要となるらしい。究極的には、自分の「死」を意識して逆算で考え、子どもの頃にやりたかったことや会社員時代に培った能力を活かすよう設計してみることが肝要と楠木は説く。


これを別の視点でまとめれば、「主体性」の復活になるだろう。長く組織で働く間に身についてしまった「お任せする」姿勢や、「空気を読む」習慣を払拭し、自分が主役となって生きるためにどうすればいいか、考えてみる。そう遠くない先に死がひかえているのだから、自分に正直に検討し、実践してみればいい。


中年の男性会社員よ、「いい顔」で死ぬためにも、定年後ぐらいは主体的に生きましょう。


評者:長薗安浩


(週刊朝日 掲載) 


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